新型コロナウイルスの影響で、賃料減額を求められたら?

新型コロナウウイルスの感染拡大とそれに伴う緊急事態宣言、外出自粛などにより影響を受けていたのは、休業要請をされていた業種に限りません。休業要請の対象となった事業者や飲食店が入居するビルの賃料支払いが困難となっているため、今度は各テナントに不動産を賃貸している不動産オーナーの方たちにも多大な影響が出ました。

ここでは賃借人から、賃料を減額してほしいなどの要望を受けたときの対応についてお話しします。

 

賃料の減額や支払いの猶予要請には応じなければならない?

新型コロナウイルスの影響によって収入が減少し、賃料を払うことが難しい」「未曽有の事態なのだから、減額をしてくれるのが当然ではないか」―。そんなことを賃借人から要求された場合、減額に応じなければならないのでしょうか。

仮に新型コロナウイルスによる影響や、自治体からの休業要請があって自粛をしたため、テナントの売り上げがなかった、というとしても、そのことは不動産オーナー(賃貸人)と賃借人の契約には何ら影響を与えるものではない、という点です。

3月末に国土交通省が、各種不動産団体を通じて、テナントの賃料の支払い猶予を求める要請を出しています。

https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000201.html

また、4月以降、各地方自治体も、休業要請を受けた業種又は飲食店が入居しているビル等のオーナーのうち、賃料減免の配慮要請に応じたオーナーに対して、減免した賃料に対する支援を行うなどして、減免への協力を呼び掛けています。しかしながら、上記はあくまで要請であり、個別の賃貸借契約への影響は、少なくとも法律上はないため、そもそも契約通りに賃料を支払わなくてはいけません。

 

賃料を変更する方法

賃貸借契約において、賃料を変更する方法は大きく次の2つがあります

・賃貸借契約の当事者である不動産オーナー(賃貸人)と賃借人が合意

・賃料減額請求をする

 

交渉し、賃借人と賃貸人の双方が合意する場合、まず賃貸借契約書の「賃料増減額の事由」について確認が必要です。多くの場合、賃料増減の事由として記載されているのが借地借家法321項に定める「土地建物の税金、土地建物の価値、近傍物件の賃料との比較」だと思います。この事由に「賃借人の収入・売上の減少」といった言葉は通常入れられておりません。従いまして、賃料減額請求の対象になることは通常はないといえます。

賃料減額などを求められた場合、もしも不動産オーナー(賃貸人)に資金的な余裕があれば、賃料減額の対応をとることも可能です。実際、大手不動産会社のグループ企業の中には、希望者に支払い猶予措置を実施しているところもあります。しかし、これはあくまでも、かなり例外的な扱いですので、これまで長年にわたって賃借し、過去には一度も賃貸借契約違反がなかった信用のできる賃借人に対してのみ考えていくということでよいでしょう。

一方、賃貸人(オーナー)ご自身もそこまで資金に余裕がない場合など、減額要求に応じる必要はありません。不動産オーナーも固定資産税や都市計画税等の税金を負担し、かつエレベーターの保守・管理費用等の経費などを支払っていることもあります。新型コロナウイルスの今回の災禍による経済的負担を、不動産オーナー(賃貸人)ばかりが押し付けられないようにして欲しいです。

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