新型コロナウイルスの影響で、建築工事やリフォーム工事が中断・遅延したらどうなるの?

新型コロナウイルスの感染拡大により、アパート建築やリフォームにも多大な影響が出ています。建設現場で感染者が発症すれば工事は延期となります。また、キッチンやトイレなどの住宅設備機器は中国製が大半を占めており、こうした住宅設備機器の未入荷により、契約はできても未着工、未完工となってしまっているのです。

アパートの建築工事やリフォームを請け負った業者が請負契約を中断したり、請負契約に沿った期間に工事を完了させられなかったりした場合、どうなるのでしょうか?請負契約上の原則では建築業者に責任があると判断されます。建築工事の中断や遅延によって、発注者(この場合は不動産オーナーである賃貸人)に損害が生じた場合、民法415条により、建築業者が工事の中断や遅延と因果関係のある損害を賠償しなければなりません。

しかしながら、今回の新型コロナウイルスの感染拡大による現在の状況は、建築業者にも不動産オーナーの、どちらの責任でもなく、不可抗力、無過失と認定されるものです。ということは、損害賠償責任はないのではないか?と思われるかもしれません。

 

新型コロナウイルスは不可抗力、無過失なのでは?

不可抗力とは、天変地異のような、通常必要と思われる注意や予防措置をとっていたとしても、それでもなお防止できない際に使われます。契約において、何を不可抗力とするか、定めているものもあります。

また、無過失とは、予見可能性(債務不履行の原因となった事由を予測できたか)がないことや、結果回避可能性(予見可能性があることを前提として、債務不履行となることを回避できたか)があることを前提に判断されます。

ほとんどの契約において、天災(地震や水害など)は、不可抗力の例として挙げられており、「疫病」も、ほぼ同じです。

今回の新型コロナウイルスの流行は不可抗力と判断される可能性は高いといえますが、まだ現時点では確定的なことは言えません。今後、どのような判断になるかは裁判例の積み重ねが必要になります。

また、無過失については、今回のコロナウイルスの予見可能性があったかという判断になります。今回の事態は、まさに未曽有の事態であり、この可能性を肯定するのは難しいと思います。

ですから、予見可能性はなかったとされる可能性は高いといえますが、残念ながら、現時点では確定的なことはいえません。

 

債務不履行となった契約について

新型コロナウイルスの流行が不可抗力であり、これによる債務不履行は無過失であるといっても、当事者のその債務不履行は新型コロナウイルスの感染拡大に起因するものでなければならないということです。

例えば、業者が発注した商品が、コロナウイルスとは関係なく納入できずに債務不履行となっていた場合、それは、不可抗力でも無過失でもありません。

債務不履行がどのような事情で発生したか、債務不履行となったのが新型コロナウイルスに起因するものであることは請け負った工事業者側が立証しなければいけません。

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